マイケル・マンリング『Thonk』リリース時のインタビュー(和訳) ※再掲載

2018年6月3日

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Michael Manringさんが彼のアルバム『Thonk』をリリースした際のインタビュー記事である、『Michael Manring - Beyond genres』を空日和が和訳したものを、掲載元のサイト様から許可をいただけたので掲載します。かなりのボリュームのため、全文ではなく抜粋箇所のみの拙訳です。全文の流れに合わないことがないように注意したつもりですが、私の拙劣な英語力と日本語力によるものなので、何か不備にお気づきになった際はお教えいただけると嬉しいです。

この場に、翻訳記事の掲載についてアドバイスをしてくださった皆川様MASAKO様、そして掲載を快諾してくださった掲載元サイト運営者のAnil Prasad様への御礼を綴らせていただきます。ありがとうございました。

Michael Manring
Beyond genres
by Anil Prasad
Copyright © 1993 Anil Prasad.
和訳 空日和 2015年7月12日

Thonk marks a real change of direction for you.
Thonkはかなりのあなたにとっての方向性の変化を示していますね。

我々はそれにTestamentからAlex Skolnick、PrimusからHerband 、そしてVital Information からSteve Smithを採用しました。Phil Aabergはある曲に参加して演奏を披露してくれましたが、とても素晴らしいピアノの才能を発揮してくれました。そのため、このアルバムにはWindham Hillの要素も存在しています。我々は恐らく史上初のNew Age-death-metal-fusion recordを完成させたのだと考えています。
私はこれまでの私の作品のルールを破るための情熱を持っているのでしょう。そこにはもはや上品さはないと思っています(笑)

Will Thonk’s album art be an improvement on Drastic Measures?
ThonkのアルバムアートはDrastic Measuresから改善させたと捉えてよろしいでしょうか?

そうなったと思いたいです!(笑) それは私が手を加えることができなかった側面でしたから。

So, no more white suits?
つまり、白いスーツはもういらないわけですね?

はい!(笑)

Was that attire Windham Hill's idea?
あれはWindham Hillの意向による装いだったのですか?

もちろん! なんて素晴らしいインタビューでしょうか。これは私がいつも言いたかったことです。それは面白い写真撮影でした。私は私が着ているもので撮影をすると打ち明けたら、彼らは私にこの白いスーツを渡しました。私が「私にこれは全然似合いませんよ」と言うと、重役が入り言いました。「これじゃないとダメです」。それから彼らは売上統計のデータやそれに基づくプロモーション戦略についてこれそれと話し、それらの結果を約束してきます。私はあまりその点で議論をする人間ではありません。彼らが私に白いスーツを着せたくても、私にとっては知ったことではないのです。わかるでしょう? 私は売上統計のデータに沿った表現かどうかばかりを注意させられて、楽しく演奏できていなかったのです。つまりそれは、現在リリースされているほとんどのアルバムを否定してしまうという恐ろしい意味になってしまうでしょう。

Are you worried about alienating your established fan base?
あなたはそれまでのあなたのファン層を遠ざけることが不安ではありませんでしたか?

もちろん、私は決して誰にも嫌な思いをしてほしくはありませんが、しかし、私は私のしたいようにしたいだけです。もし、私がファンの皆さんを不愉快にさせたのなら申し訳ないです。しかし、私は私自身に正直にいたいのです。私は、私のすることはいくらかのファンを遠ざけてしまうだろうと思っていました。しかし、私はしなければいけないことをしなければいけないのです。皆さんがそのことを理解してくれることを、私は願っています。私が楽しい時間を過ごしたく、私自身が楽しみたいということを。

What sort of label constraints were placed on you when making the last album?
最後のアルバム制作の際に、何かレーベルの権限によりあなたの立場が制限されることがありましたか?

Drastic Measuresにおいては、彼らは本当に無干渉でした。彼らは私とSteve Rodbyに全てを任せました。私はレーベルに足を運び、「今回、あなたたちはとても寛容に制作をさせてくれました」と話しました。彼らは基本的に「あなたがしたいようにしてください」ということ以外を口にしなかったので。そのため我々は「我々がこの作品においてあなた方に音楽的に貢献できることはありますか?」「我々がこの作品であなた方を満足させる方法が何かありますか?」と聞きました。ご存知のように、それがプロというものです。そうしたら彼らは「はい、もしあなたが何かのカバー曲を提供してくれれば、それが我々が非常に助かる方法の一つです。なぜなら、我々はそれがラジオで流せると考えているからです」と言いました。それが我々がPoliceの『Spirits In The Material World』を収録した理由です。もちろん、それは結局はまったくヒットせずに終わりましたがね(笑) 私はそれがラジオで流されることはないであろうと思いましたが、Windham Hillはそれを手にしてとても喜んでいました。そういうわけで、私は彼らに自主的に貢献したのです。

That’s surprising to hear. I assumed that the label played a more active role.
それは意外でした。私はレーベルはもっと活発に権限を行使していたのだと思っていました。

私のこの点に関しての唯一の後悔は、私は全てのレコーディングをベースのみでしたかったということです。ベース全般に向けられた何とも驚くべき偏見の存在がそこにはあります。存在している多くのひどいクラブは大抵、もしあなたがギターを弾いていたら、もっとあなたと付き合いたいと思っただろうと私たちに言ってきます。事実、彼らはまったく私と手を組みません。そして、その種の考え方は、音楽産業の隅々にまで浸透しています。
プロデューサーたちは他の何を差し置いても、ベースパートのレコーディングを慣習的に敬遠します。大半のベース奏者たちは、どれだけの圧力が産業全体から彼らに向けられているのかを理解していないと私は思います。それに「差別」という言葉を使うのも変ですが、まさにそれが当てはまります。私は今まで人々がベースにまつわる汚名の存在についてを話しているのを聞いたことがありません。ベース奏者たちがそのことについて考え、私たちの演奏には聴く価値があり、私たちはそうすることができるのだということを私たち自身に明らかにすることを、私は期待しています。

The dichotomy you describe also exists within the bass community itself.
あなたの言う意見の食い違いは、ベース社会そのものにも存在していますよね。

そう、あなたの言うとおりです。要するに、あなたの行くコンサートにも、あなたがベースを聴いているということに注意を払わないようなベース奏者が恐ろしくたくさんいるということなのです。そんな彼らが何を演奏しようと、あなたの耳には入りません。そのような状態では、ベースやベース奏者がもはや必要ではないと思われてしまうでしょう。あなたは彼の演奏が聴けず、彼がとりわけ不可欠なことをしないのに、彼に支払いをする気になれますか? こんなにも素晴らしい音があるのに、状況はそのように屈辱的です。幸いなことは、多くの人々が向上心を持ち続け、ベースが音楽に貢献しているという認識を求めて戦おうとすれば、状況は変わるということです。私のすることの全てにおいて、それが私の目標です。ベースが真の楽器であるという感覚を確立させることが。

It seems to be a scenario pretty much exclusive to the rock and pop realms.
それはロックとポップによく当てはまるように思えます。

そうですね。クラシック音楽界においては、チェロのソロコンサートのことを大抵は聞かないことと同様に、ベースのソロコンサートというものも聞きません。実際は、何人かはコントラバスのソロ演奏で生計を立てている人はいて、それはとんでもなく重低音が効いた演奏です(笑)

I'd like you to reflect on each of your first three solo albums. Let’s start with Unusual Weather.
あなたにあなたの最初の3枚のソロアルバムについてそれぞれ振り返ってもらいたいと思います。まずはUnusual Weatherについてからお願いします。

私は決してそれらのソロレコードから私が求めていたもの得ることができませんでした。本当に私らしい何かを。私はUnusual Weatherは私が実現したかったビジョンの実現にかなり近いものだと思います。そのときは、私にもプロデューサーのBob Readにもうまくやってのける能力が十分にはありませんでした(笑) 我々はそこに苦闘しました。私から言わせてもらえば、レコードの大部分に、求めた雰囲気と意図が表れていると思います。我々はシンプルな雰囲気のレコードを作りたかったのだと思います。フォークのような、ジャズのような。ほとんど全ての作業が私かBob Readによるものでした。そのため、レコードの技術面全般は、我々の演奏とレコーディングのレベルへの挑戦でした。我々の気持ちは定まっていましたが、それに我々の実力を合わせるのは大変でした。

Next up is Toward The Center Of The Night.
次は、Toward The Center Of The Nightについてお願いします。

それについての作業は全て私自身が行いました。私はそれのプロデュ―スをし、ほとんどの楽器を演奏しました。それはすごい挑戦でした。あそこまでの経験をすることは今後無いかもしれません。それはとても多くの作業でした。それが私が本当に望んだように世に出たとは思いませんが、私は収められている何曲かを本当に誇りに思っていますし、他の私のレコードよりも多くの変則チューニングをそこで確立しました。私はとても優秀なプロデューサーではありません。私はこのレコードが最も苦労した作品だと思います。もし本当に素晴らしいプロデューサーがいたら、それはもっと良いレコードとなったと思います。

That brings us to Drastic Measures.
続いてDrastic Measuresについてお願いします。

それはSteve Rodbyと共に携わった本当に素晴らしい仕事でした。彼は親友であり、そして素晴らしい音楽家です。我々はその作業で非常に素晴らしい時間を過ごしました。それはかなり私が伝えたかったことを伝えられているように思いますし、サウンドも満足のできるものです。全てがかなりうまくいきました。私が感じていたのは、ある種の「よし、我々が今することで、私はかつてない何かを、ここではないどこからか手にして実現することができる」という情熱でした。

Is there a philosophy you adhere to when making albums?
アルバムを制作する際の、譲れない哲学はありますか?

根本の考え方として、私はレコーディングとは旅に行くようなものだと思っています。何が向こうにあるのかを見て、試行し、学ぶのです。私は完璧な表現のレコーディングを作れるとは思っていません。アルバムはその瞬間を切り取るものです。それらは探究する、または学ぶ機会であり、また失敗する機会でもあります。

Given the difficulties in promoting bass-oriented music, how did you convince Windham Hill to take you on as a solo artist?
ベース指向の音楽を促進することが困難であるにも関わらず、あなたはどのようにWindham Hillにそれを納得させ、ソロアーティストとして雇ってもらったのですか?

それは恐らく、彼らがとても純粋であったからだと私は考えています。彼らはただ私の音楽を好きになり、それを素晴らしいものだと思ってくれたので私と契約をしたのです。
しかし、私たちが話したように、ベースにおいては音楽業界に真の汚点があります。人々は本当にベースをあるものとして定義したがり、そして彼らは本当にそれ以外の何かであるという主張を嫌います。彼らはこのように言います。「70年代においては、ベースがソロを演奏するという考えは私たちを楽しませましたが、経済的に厳しいため、現在はそれを許すつもりはありません」。彼らは、インストのアルバムにおいて創造的な何かをしようとしている人たちよりも多くの売り上げをポップミュージックを売ることによって得ることができます。それは本当に屈辱です。
世間はあまりに多くの人間たちにギターやサックスで何かをさせようとしました。ベースや他の楽器は軽視されています。例えば、私の友人であるPaul McCandlessは才能あるオーボエ奏者なのですが、それを人々に理解してもらうことは難しいことだと知っています。そのため、人々が受け入れてくれる楽器であるサックスを演奏するべきであるという多大なプレッシャーを抱えています。サックスはジャズの楽器として受け入れられるからです。

The Hyperbass is a unique instrument in that it lets you switch tunings on the fly. What attracts you to that idea?
Hyperbassは即座にチューニングを変えられるユニークな楽器です。何があなたをそのアイデアに至らせましたか?

私が年々変則チューニングにこだわっていたために、そのような仕様となりました。それぞれの曲は、その全体にそれ自体の小さな世界、小さなリアリティーを持ちます。ベースのチューニングを変えたとき、音楽全体の響きは本当に変わります。それはそれに全く異なる性格を与えます。ベースのソロコンサートをすることになったことを誰かに話したとき、彼らはそれは終始同じ音だと想像しますから、チューニングを変えベースの音を変えることでソロコンサートは素晴らしいものとなります。それなら、なぜ曲の途中でチューニングを変えずに、曲の終りごとにチューニングを変える必要があるのでしょうか? その考えに至った私は、演奏中にクランクを回してチューニングキーを操るようになり、そしてそれがかなり得意になりました。

How do you align your mind to work with a new tuning on the fly?
あなたはどのように即座に変えたチューニングを把握して演奏しているのですか?

大抵は、それは異なるインターバルに対処することを学ぶという課題です。私は本当に長い間それをしてきたため、徐々に慣れてきました。しかし、もちろん、私はいくつかの変則チューニングで『Donna Lee』を弾こうとはしません。

How are you playing three at once?
あなたはどのように3本のベースを一度に演奏しているのですか?

それはジャグリングのようなものです。

What are the biggest challenges for bassists trying to develop a unique voice on their instrument?
ベース奏者にとっての、彼らの楽器のユニークな音をより発展させるための最も大きな挑戦とは何でしょうか?

もしベース奏者として出発しようとすると、その楽器についての本当に良い情報を手に入れることは本当に困難です。全体の状況はまったく高水準ではありません。自己を表現する機会を与えられる場所に立てるように努めることが挑戦であると私は思います。ところが、もしバイオリンを演奏し、その才能をいくらか発揮すれば、指導をし、自己を表現する機会を与えてくれる先生がかなりたくさんいます。ことベースという楽器においては、多くの矛盾する姿勢と多くの誤った情報が存在しているのです。
ベースはとてつもない先入観を抱えています。それは「ベースの役割は……です」という風に人々が言うことを私が聞いたことがある唯一の楽器であり、その内容は大抵「ベースの役割はドラムと共に活躍してリズムを支えることです」というものです。それはそうだとしても、私たちは「ピアノの役割」や「ギターの役割」を聞くことはありません。私はその「ドラムと共に活躍しバンドをしっかり支える」というベースの概念に反抗してはいませんが、しかし、実際にはそれ以上の力をその楽器は持っています。それは素晴らしいソロ楽器でもあるのです。汚名を返上することは信じられないほど難しいことなのです。

You were once in a disco band called Spectrum. What do you recall about the experience?
あなたはかつて、Spectrumというディスコバンドに在籍されていましたね。その経験で何か思い出すことはありますか?

あなたはよく下調べをしてきていますね(笑) それは激務という点で、創造的に破壊的でした。そのため、私はそのような仕事をする私の同僚を本当に気の毒に思います。それは大変な仕事でした。

Another early gig was with a fusion band called Natural Bridge.
もう一つの初期の活動に、Natural Bridgeというフュージョンバンドでの活動がありますよね。

はい。それはとても良いバンドでした。我々は当時の多くのフュージョンバンドほど魂が抜けているわけではありませんでした。

Was Michael Hedges an inspiration for your bass approach?
Michael Hedgesはあなたのベースのアプローチにインスピレーションを与えましたか?

きっと、間違いないでしょう。ただ、私が初めて会ったときの彼はNeil Youngのクローンでしたよ(笑) 彼はどう考えても素晴らしいギター奏者ではありませんでした。実際のところ、もし人々がそのときに彼が百人の偉大なギタープレイヤーのうちの一人であると提案したならば、彼は笑い飛ばしたでしょう。彼はちょうど、少し変わったようにギターをかき鳴らすフォーク歌手といったところでした。当時私はフュージョンを演奏していましたが、しかし、我々は音楽に関していくつかの共通の好みを持っていました。そのため、我々は一緒に演奏し始めました。我々はたくさんのことを教え合ったと思います。私は彼が教えてくれた以上のものを彼から学んだつもりですが、一方で、私も彼に示したものはあり、そして彼はそれらを取り込み、それらを信じられないものに変えました。私は彼にグル―ビングと音楽におけるドラムのあり方についてのたくさんのことを話したことを覚えています。私が彼に会ったとき、彼の友人らが全員Pat Martinoのように演奏できるのに彼にはそれができず、そのことで少し馬鹿にされていることを彼は悩んでいましたが、そんな彼がとんでもないギタープレイヤーへと開花する様子は見ていてとても驚きました。

Have you considered touring as a duo again?
あなたは再び2人でツアーをすることを考えたことがありますか?

我々は何であろうと共にやり遂げ、それを乗り越えると思います。

You once said "Americans are often skeptical of virtuosity, which of course they should be." Elaborate on that.
あなたはかつて、「アメリカ人はもっと名人芸に懐疑的であるべきだ」と言いました。それについて詳しくお願いします。

特殊技巧はトリッキーなものです。音楽で人の心を惑わすことは簡単です。音楽はとても強力で、それを悪用することは簡単です。観衆を操ることは簡単です。私は、速くて、派手で、現実離れした音楽には懐疑的なほうが良いと思います。「すごいですね。でも、それで?」と聞くべきです。派手なものよりも、より音楽的なものがあります。それはもっと認められるべきです。